サブボクセル?
第1章から第17章で解説したパルスシーケンスを,BlochSolverで実行するためには,サブボクセルに関する知識が必要である.以下に,それらについて解説する.
サブボクセルとは?
BlochSolverにおける基本的な考え方は,Blochシミュレーションによる取得される画像は,原則,数値ファントムと同じ画素サイズを持つということである.すなわち,シミュレーションを行う画像マトリクスの中心に,それぞれ1個の核磁化を配置し,その核磁化が有するプロトン密度,T1値,T2値を用いて,パルスシーケンスに従って,Bloch方程式を数値的に解き,その総和により信号強度を計算している.
ところが,画素には広がりがあるため,画素内の核磁化の強度(画素強度)を,その中心に置かれた1個の核磁化で表現できないことが,しばしば生じてしまう.このような場合には,1個の画素を,x方向,y方向,z方向に分割し,分割した画素内にそれぞれ1個の核磁化を配置して計算する必要がある(Fig.S1-1).この分割された小さな画素のことをサブボクセルと呼んでいる.

サブボクセルが必要な場合は,大きく分けて,次の3つの場合である.
1. 画素内サイズにわたる静磁場不均一性が存在し,グラジエントエコー法において,画素内の核磁化の位相の分散が大きく,信号のロスを正しく表現できないとき.静磁場不均一性の存在する方向に沿って,サブボクセル数を増やす.
2. RF spoilingのBlochシミュレーションを行う場合,TR<<T1もしくはT2のとき.信号のリードアウト方向に沿って,サブボクセル数を増やす.このような場合,グラジエントエコーばかりでなく,スピンエコー,stimulated echo,そして,higher order echoが発生するため,そのようなエコーによる信号強度を正しく評価するためには,多くのサブボクセル内の核磁化が必要となる.ただし,位相エンコードに沿った方向には,サブボクセル数を増やす必要はない.
3. スライスのリフォーカスに用いられる選択励起パルスを評価する場合.スライス厚は,通常,数mmであるが,スライスのためのRFパルスは,スライス面に垂直な方向に沿ったグラジエントを加えた状態で印加する.このときの核磁化の複雑な運動は,スライス方向の画素サイズよりも小さなサイズに分割して計算しなければならない.
実例については,https://www.blochsolver.org/subvoxel/をご覧ください.