第9章 三次元グラジエントエコー法

MRIにおいて,三次元領域をスキャンする手法として,三次元イメージング法マルチスライス法の二つの手法がある.

三次元イメージング法は,通常グラジエントエコー法を用いて行われ,MRAMPRAGEなどへの応用がなされている.

スピンエコー法を用いた三次元イメージング法は,高速スピンエコー法が用いられることもあり,実装が難しく,一般化したのは,グラジエントエコーによる三次元イメージング法よりも,ずっと後(2000年代)のことであった.

よって,この章では,グラジエントエコー法を用いた三次元イメージング法のパルスシーケンスを紹介する.ここでは,RFスポイリングを行った三次元グラジエントエコー法(RF spoiled 3DGRE)と,balanced SSFPのシーケンスによる三次元グラジエントエコー法(3D bSSFP)を紹介する.

Fig.9-1に,RF spoiled 3DGREのシーケンスチャートを示す.また,Fig.9-2に,シーケンスのソースコードを示す.以下に,シーケンスチャートとソースコードを用いたシーケンスの説明を行う.

まず,RFパルスで励起を行う.三次元イメージングの場合,通常は,空間的な選択は不要であるが,位相エンコード方向にエリアジングがある場合には,sincパルスなどを用いて,撮像領域を選択的に励起する場合もある.ここでは,フリップ角30°パルス幅300μ秒の矩形パルスを使用している.

ソースコードの30行で,RF励起を記述しているが,RFパルス印加中の核磁気緩和を考慮して,RFパルスを10個に分割して計算を行っている.というのは,RFパルス印加の際は,RFパルスを細かく分割して,核磁化の回転の計算と緩和の計算を交互に行っているためである.また,RF spoilingを行うために,二重の位相エンコードループの励起の順番に従った位相でRF励起を行っている.

ソースコードの32行のPhaseEncodingブロックでは,GyGzによる位相エンコードと,GxによるRead Prephasngを行っている.そして,40行のReadoutブロックでは,直前のRFパルスの位相と同じ位相成分の信号を計算している.さらに,Rewindingブロックでは,GyGzによる位相エンコードの巻き戻しを行い,Gxに関しては,1画素内で,ちょうど核磁化が1回転するようにグラジエントを印加している.

ソースコードの50行のMain()以下では,Gzによる位相エンコードループと,Gyによる位相エンコードループ二重のループになっている.WaitUntil(TE-NR//2*2*dwell_time-gx_rise_time*2.5)は,エコータイムのタイミングを決定するためのAPIである.

Fig.9-1. RF spoiled 3D gradient echo法のシーケンスチャート

Fig.9-2. 3D RF spoiled gradient echo法のソースコード

上記のパルスシーケンスで,Bloch simulationを行った結果を,Fig.9-3に示す.これらを計算するにあたっては,画素内のさまざまな位相を有する核磁化が生成する多重エコーの効果を再現するために,リード方向のサブボクセル数を多く確保する必要がある.この計算では,リード方向に16個のサブボクセルを確保している.このように,T1強調画像が求められている.

Fig.9-3. RF spiled 3D gradient echo法による画像.左から,axial,coronal,sagittal plane acquisition

Fig.9-4に,3D Balanced SSFPのシーケンスチャートを示す.また,Fig.9-5に,シーケンスのソースコードを示す.以下に,シーケンスチャートとソースコードを用いたシーケンスの説明を行う.

3D Balanced SSFPでも,2Dの場合と同じように,+αのRFパルスと-αのRFパルスを交互に印加し,グラジエントはエコー発生の時刻に関して対称に印加している.スライスは原則不要であるが,外側の位相エンコード(この場合はGz)に関する画像のエリアジングが発生する場合には,撮像領域をスライスするようにGzを追加する.

撮像は,三次元のk空間の端から行うため定常状態に達するまでのダミースキャンは,実際上不要である.

Fig.9-4. 3D Balance SSFP法のシーケンスチャート

Fig.9-5. 3D Balanced SSFP法のシーケンスのソースコード

上記のパルスシーケンスで,Bloch simulationを行った結果を,Fig.9-6に示す.この計算では,画素内のすべての核磁化は,同じ位相で運動するため,画素内の核磁化間の位相差は生じない.このため,サブボクセル数は,リード方向でも1で良い.このように,T2/T1を反映した画像が得られている(CSFのT1は4秒,T2は0.2秒程度としているため,他の脳実質のT2/T1と同様のコントラストとなっている).

Fig.9-6. 3D Balanced SSFP法による画像.左から,axial,coronal,sagittal plane acquisition