第2章 パルスシーケンスの分類とSequenceGenerator
Fig.2-1に,信号発生の観点から見た,パルスシーケンスの分類を示す.このように,パルスシーケンスは,グラジエントエコー法,スピンエコー法,エコープラナー法の3種類に分類される.
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そして,それぞれの方法は,さらに,二次元イメージング,三次元イメージング,マルチスライス法の三種類に分類される.ただし,エコープラナー法を用いた三次元イメージング(Echo volumar法)は,ほとんど使用されていないので除外している.
グラジエントエコー法は,Unbalanced steady state free precession(ubSSFP)法,RF spoiled gradient echo法,Balanced SSFP(bSSFP)法の三種類に大別される.
ubSSFP法は,MRIの基礎となったスピンワープ法や,FLASH法を基礎とするものであり,グラジエントエコー法の基本的手法である.各MRIメーカーでは,GRASS法,FISP法などと呼ばれているが,画像コントラストが複雑なこともあり,実際の用途は比較的少ない.
RF spoiled GRE法は,RFパルス間の核磁化のコヒーレンス(位相連続性)を断つことにより,主に,高速にT1強調画像を取得することを目的とした手法である.SPGR法,FLASH法などと呼ばれている.
bSSFP法は,上記の手法とは逆に,RFパルス間の核磁化のコヒーレンスを最大限に活用した手法で,単位時間あたりのSNRを最大化することを目的として使用されている.TrueFISP法などと呼ばれている.
スピンエコー法は,1個の励起パルスと1個のリフォーカスパルスで,k空間の1本のラインの信号を計測するconventional SE法と,1個の励起パルスと複数個のリフォーカスパルスにより,k空間の複数のラインの信号を計測する,高速スピンエコー(Fast SEもしくはFSE)法がある.この方法は,RARE(rapid acquisition with relaxation enhancement)法,TurboSE法などと呼ばれることもある.
EPIにおける信号は,すべて基本的にはグラジエントエコーであるが,k空間の原点の信号を,リフォーカスパルスを用いて,スピンエコー条件で取得するか否かで,spin echo EPI法と,gradient echo EPI法に分類される.
これらのパルスシーケンスを,多数のパラメタにしたがって作成するのは,非常に骨の折れる仕事であり,しかも,それぞれのパルスシーケンスは,多くの研究開発の成果によるものである.よって,パルスシーケンスの習得を目的とする場合には,それに必要なツールを使用することが望ましい.
この目的で開発したツールが,SequenceGeneratorである(Fig.2-2).
このツールを使用することにより,パルスシーケンスの選択と,さまざまなパラメタを選択するだけで,目的のパルスシーケンスを得ることができる.
ただし,これを使用するだけでは,それぞれのパルスシーケンスが,どのような技術的背景にしたがって作成されているかは不明である.そこで,第5章以下に,各パルスシーケンスを生成するにあたり,どのようなことに注意して作成されているかを,BlochSolverを用いたsimulation結果と共に解説する.
また,個々のパルスシーケンスを解説するに当たり,必要となる画像の座標系,数値ファントム,そしてパルスシーケンス記述言語について,第3章と第4章で説明する.
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