第1章 序章
パルスシーケンスは,MRI装置を動かす場合の基本となる要素である.これがなければ,MRI装置を動かすことはできず,また,これによって,さまざまな画像を取得することができる.そして,これがMRIの大きな特長となっている.
パルスシーケンスに関する教科書は存在しているが(1),実際のパルスシーケンスの作り方を,一から説明している教科書は,一部の例外を除き(2),ほとんど存在していない.
パルスシーケンスの実際の作り方の(公開された)解説がない理由は,各MRIメーカーのパルスシーケンス開発環境と,パルスシーケンスそのものが公開されていないためである.
そこで,この問題を解決するために,パルスシーケンスを柔軟に記述できる言語(pulse sequence description language, or Python pulse sequence description language : PSDK)を開発し,さらに,PSDKによって記述されたパルスシーケンスが動作するMRI simulator(BlochSolver)を開発した(2).
この解説(MRIパルスシーケンスの作り方)は,上記のPSDKとBlochSolverを用いて,パルスシーケンスの作り方を,1から解説したものである.
また,パルスシーケンス全体の見通しを良くし,さらに,容易にパルスシーケンスを作成するために,SequenceGeneratorを使用して,シーケンスを自動生成する.そして,その生成のアルゴリズムを説明し,シーケンスチャートとソースコード,そして,BlochSolverによるsimulation結果を示す.
このコースを一通り学習することによって,パルスシーケンス,そしてMRIそのものに関する理解が深まるものと期待される.

- Matt A. Bernstein, Kevin F. King, Xiaohong Joe Zhou, Handbook of MRI pulse sequences, Elsevier, 2004.
- 巨瀬勝美,巨瀬亮一,MRIシミュレータを用いた独習パルスシーケンス〔標準編〕,医療科学社,2020.