第11章 二次元マルチエコー法(グラジエントエコー・スピンエコー)
二次元のマルチエコー法には,マルチプルグラジエントエコー法と,マルチプルスピンエコー法がある.マルチプルグラジエントエコー法を発展させると,2D-EPIになる.いっぽう,マルチプルスピンエコー法は,高速スピンエコー法や,ワンショットでスピンエコー撮像を行う,いわゆるHASTE法などへ応用される.
もちろん,マルチプルグラジエント法は,T2*マッピングや,磁化率マップの計測に応用され,マルチプルスピンエコー法は,T2マッピングなどにも利用されている.
Fig.11-1とFig.11-2に,二次元マルチプルグラジエントエコー法のシーケンスチャートと,そのソースコードを示し,その動作を以下に説明する.
このパルスシーケンスは,Excitationブロック,PhaseEncodingブロック,Readoutブロック,Reverseブロック,Rewindingブロックから形成される.まず,核磁化は,Excitationブロックで励起され,PhaseEncodingブロックでreadoutグラジエントのphase predephasingと反転が行われ,同時に,位相エンコードが行われる.その後,Echo spacing(ES)の時間を確保するための時間をWaitFor()で確保しながら,Readoutブロックで信号を読出し,その後,Reverseブロックで,リードアウトグラジエントを反転している.これを,ETLの回数だけ繰り返している.
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Fig.11-3~Fig.11-5には,二次元マルチプルグラジエントエコー法でBloch simulationにより求めた,axial,coronal,sagittal像を示す.サブボクセル数は,スライス方向のみ4で,他の方向は1とした.このBloch simulationでは,静磁場の不均一性は考慮していないので,ある組織(白質)の信号は,Fig.11-6に示すように,T2減衰曲線を示す.このT2は,約75.8msである.
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Fig.11-7とFig.11-8に,二次元マルチプルスピンエコー法のシーケンスチャートと,そのグラジエントの詳細なタイミングを示す.また,Fig.11-9に,そのソースコードを示し,その動作を以下に説明する.
このパルスシーケンスは,Excitationブロック,ReadPredephasingブロック,Refocusブロック,Readoutブロックから形成されている.
まず,核磁化は,Exitationブロックで励起され,ReadPredephasingブロックで,リード方向のdephasingが行われ,Refocusブロックで核磁化がリフォーカスされる.Refocusパルスの前後には,信号のスポイリングのためのクラッシャーグラジエントが加えられている.クラッシャーグラジエントは,スライス面内で,核磁化が2回転するように加えるのがいいとされている.
Readoutブロックでは,Fig.11-8に示すように,位相エンコードと位相のリワインド,そしてその間に,リードグラジエントの下で,信号のサンプリングが行われる.また,リードグラジエントは,エコーの中心から,核磁化がリード方向に沿って画素内で1回転するように加える.すなわち,リードグラジエントが囲む4個の部分(〇で示している)の面積が,すべて等しくなるように加える.
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Fig.11-10~Fig.11-12には,二次元マルチプルスピンエコー法のBloch simulationにより求めた,axial,coronal,sagittal像を示す.サブボクセル数は,スライス方向に64とし,他の方向は1とした.
Fig.11-13には,Fig.11-6に示したものと同じ組織の信号の,マルチプルスピンエコー画像における変化を示す.複数の折れ線は,スライス方向のサブボクセル数の違いを示す.このように,第一エコーの信号強度は,サブボクセル数に依存しないが,サブボクセル数が少ない時は,大きな振動的変化がみられ,サブボクセル数が32から64になると,その変動は,ほとんど消失する.
このような信号強度の振動は,少ないサブボクセル数では,stimulated echoの信号強度が正しく計算されないためであり,サブボクセル数を増やすことにより,正しい信号強度を再現することができる.
サブボクセル数が64の時に,第二エコーからの信号減衰を,単一の指数関数にフィットして,そのT2を求めると,約92.6msとなる.これは,Fig.11-6で求めた75.8ms(本来のT2)と比べると,stimulated echoの効果を含んで,長めに計測された結果だということができる.よって,より正しいT2を求めるためには,90°パルスによる励起スライス幅をより狭くすることや,T1を別途計測して,Bloch simulationにより正しいT2を求めるなどの方法が必要となる.
このようなマルチプルスピンエコーは,高速スピンエコー法では必須の手法であるが,T2減衰の効果だけでなく,T1によるstimulated echoの効果が混入していることに留意しなければならない.
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