第8章 二次元グラジエントエコー法(Balanced SSFP法)
二次元グラジエントエコー法において,横磁化のコヒーレンスを断ち切るRF spoiled gradient echo法とは対極をなす,すなわち,横磁化のコヒーレンスをできるだけ活かす手法がある.これが,Balanced SSFP(steady state free precession)と言われる手法である.
このパルスシーケンスは,Fig.8-1に示すように,グラジエントの形状が,エコー信号を中心として,時間的に,すべて対称となっている.また,RFパルスの極性が,交互に符号が異なっているのが特徴である.また,TRはTEの2倍である.
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定常状態における核磁化の動きを,Fig.8-2に示す.このように,TRの間に,横緩和と縦緩和を行いながら,回転座標系の+側と-側で,フリップを繰り返す.すなわち,核磁化は,① → ② → ③ → ④のように動く.
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このパルスシーケンスでは,核磁化が,最初の熱平衡状態(核磁化が静磁場方向を向いた状態)から,定常状態に達するのに,かなり時間を要するため,データ収集を行わないスキャン,すなわち,ダミースキャンが不可欠である.
ダミースキャンの方法として,最初に,フリップ角が半分の励起を行い,その後,シーケンスを繰り返す方法などが提案されている.
Fig.8-3に,パルスシーケンスのソースコードを示す.
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以下に,シーケンスチャートとソースコードを用いて,シーケンスの説明を行う.
まず,シーケンスのBlock()としては,最初にα/2だけ励起するExcitation_half-と言うブロックを定義する.その後,Excitation+,Excitation-,PhaseEncoding+,PhaseEncoding-,Readout+,Readout-,Rewinding+,Rewinding-を定義している.このように,+αで励起した場合と,-αで励起した場合で,ブロックを分けて定義している.これは,それぞれの場合で,k空間のラインが異なる(偶数と奇数)ためである.
Main()以下に定義されたシーケンス制御では,まず,-α/2で励起を行い,その後,データ収集を行わないαと-αの励起とグラジエントの印加を,100回繰り返している.その終了後に,励起を行いながら,128回(NPE1)のデータ収集(256本のk空間のラインの計測)を行っている.
Fig.8-4には,ダミースキャンの回数を変化させたときの画像コントラストの変化を示す.このように,ダミーの回数が少ない時は,T1強調的なコントラストであるが,ダミースキャンの回数が増えて,定常状態に近づくにつれて,T1/T2に比例した画像コントラストに近づいていく.
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